いちご狩りは、5月20日で終了しました。
近年の急激な温暖化の進み具合から、イチゴ栽培の問題点と現状施設栽培の問題点を考えています。
温暖化の前のイチゴ栽培は、収穫時期が通常12月から5月頃まででした。
このため、長期間にわたって栽培温度が影響します。
1.栽培期間が期間が6か月と長いので温暖化の影響を受けやすい。
2.植物は、1年の特定の時期しか、繁殖のための花を咲かせません。(花芽分化)
従って、12月のスタートから5月頃の気温が全て花芽分化に影響を与える。
3.イチゴは、温かくなると実が柔らかくなり、糖度が下がり、酸味が出てきます。
4.増殖方法が、種でなくランナーから子供を取り実取り苗として使用するため、増殖期間の6月から
9月までの気温が影響する。
5.ランナーから増殖する時期は、高温になりやすいので、炭疽病と言う、恐ろしい病気に
なり、最悪は苗が全滅することもある。
最近は、苗屋さんでも苗が購入できないぐらい、自家苗が少なくなっている。
6.増殖時期や定植時期が6月から9月と暑いので、栽培する作業者(特に高齢者)が暑くて
ハウスに入れない。最悪は熱中症に襲われてしまう。
近年、寒い東北や北海道が、お米やブドウなどの適作地になり、適作地が北上しています。
しかしながら、イチゴの場合は、寒い東北や北海道でも温暖化の影響で、12月に収穫できていないようです。
従って、今後は、下記対策が出来ないイチゴ園は、生き残れないでしょう。
1.12月頃収穫を開始するためには、花芽分化をコントロールする技術(夜冷処理)が必要。
2.さらに、2番花の花芽分化をコントロールする技術が求められる。
3.作業環境やイチゴの品質(糖度・柔らかさ・病害虫)を維持するための施設が必要。
そこで重要になるのが、イチゴの栽培条件をコントロールする施設、すなわちハウスが重要になってきます。
施設で言えば、温暖化に一番強いのは、投資単価が一番安い単棟ハウスです。理由は、花芽分化が
起きるまでビニールを被覆しないなど、ハウス内の温度が低く保てるからです。
さらに、暑い時期も両サイドから涼しい空気がハウスに入るからです。
最悪のハウスは、天井の開口部が少ないオランダのハウスです。もともとオランダなどのヨーロッパは、
気温が低く日照が少ないので、日照不足対策のハウスなのです。
つまり、日本のような日照が多く高温になりやすい気象には、不向きだと考えています。
山梨県北杜市のトマト団地は、オランダのハウスを導入して、困っているようです。
単棟ハウスと連棟ビニールハウスと連棟鉄骨ハウスとオランダの連投ハウスの猛暑時の
開口部比較(涼しさ)。猛暑時は開口部が大きいほど、ハウス内の高温が外部に流れてハウス内の温度が低くなる。
天井 | 天井窓 | サイド | 妻面 | |
施設名 | ビニール | 開口部 | 1棟の開口部 | |
単棟ハウス | 暑い時は、無 | 無 | 開口部無 | |
全面開口 | 暑い時全面開口 | 両サイド開口大 | ||
連棟ビニールハウス。 | 3~5年に1度張替 | 1~2か所/棟 | 両サイドの棟のみ | 特殊注文 |
暑い時開口部小 | 開口部広い | 開口部少ない | 開口部有 | |
連棟鉄骨ハウス | 5~20年で張替 | 1か所 | 両サイドの棟のみ | 特殊注文 |
暑い時開口部小 | 狭い | 少ない | 開口部有 | |
連棟オランダの鉄骨ハウス | 10~20年で張替 | 1か所 | 両サイドの棟のみ | 無 |
暑い時開口部極小 | 狭い | 少ない | 開口部無 |
施設栽培の特徴
1.光。温度、炭酸ガス、湿度、肥料などが環境に合わせて調整できる
2.上記環境をコントロールできる施設ほど建設費が高い。
3.現在の温暖化に対応できる標準の市販ビニールハウスは、無い。
4.栽培期間が長くないと設備投資費の回収が出来ない。理想は6か月間収穫する。
5.天井のビニールやアクリル板やガラスなどを定期的に交換しなけれならない。
大半の農家は、このコストを収益計算に見込んでいないので、3~20年の交換サイクル時に、
貯金を使い切ってしまう。
6.温暖化の高温でビニールの耐久年年数が減ってきている。
簡単に言えば、
1.現在のハウスでは、温暖化に対応できないので収穫期間の激減(極端な場合は、半分以下の収穫量)
による主格量が減り、売り上げが減る。
2.ビニールハウスの資材の高騰による、張替時の臨時コスト増加。
{天井ビニール・遮光カーテン(1重と2重)}
3.電気・A重油などのエネルギーコストの高騰
4.培地の高騰
5.人件費の高騰と人手不足
6.イチゴの品質低下と価格高騰により、イチゴ離れが進むと予測する(市場縮小)。
7.首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)などで、イチゴ農家の増加により、
山梨のいちご狩りのお客様の激減。
8.少子化と塾通いの増加で、いちご狩りのお客様の減少。
などの厳しい経営状況があります。
今年のような厳しい温暖化が続けば、山梨の連棟大型ハウスのイチゴ農家は、いちご狩り園から、
いちごの市場出しを余儀なくされるでしょう。
いちご狩りのお客様の獲得が出来ない、安い市場出しが出来ない、そのハウスに見合った売り上げが
確保できない、農家は自然淘汰されるかもしれません。
なぜならば、イチゴの施設栽培は、そのハウスの1年間の収穫量の増減にかかわらず、苗を植えた瞬間から
1.苗の代金。2.1年間の電気代金。3.1年間のA重油代金。4.1年間の肥料代金5.1年間の農薬代金
6.1年間の人件費など、多額の金額を支払うことになります。
収穫量に変動するのは、出荷用の資材費(少ない)ぐらいです。
そして、5年に1回、ハウスのビニール張替費用(高い)も支払わなければならない。
その結果、赤字でも次のハウス張替までの5年間は栽培を継続してしまう。
山梨のイチゴ園は、さくらんぼうやももや葡萄を同時に栽培している農家が多いです。
漏れ聞くところによると、今年は品種によりももの着果が良くなかったり、シャインマスカットも
受精しない現象が出ているらしい。イチゴ栽培の損失を他の果物や野菜やお米などで穴埋めしていた農家も、
イチゴの損失を他の果物で埋めることも難しくなるかもしれませんね!
この危機を乗り越えるには
1.手間暇を惜しまずに、温暖化に対応する。
2.収穫量が減っても経費を下げて経営。
3.高品質のイチゴを栽培して、お客様を確保。
4.安価な温暖化対応の設備を自分で考えて作る。
5.自然環境をこまめに調査し、1~2週間先の気象条件に栽培条件をかえる。
これらの対策を実施すれば、勝ち組として生き残れ、今まで以上の収益が確保できるかもしれない。
しかし、世の中のイチゴ離れが更に進めば、競争が激化し、生き残るのも難しくなるかもしれない。
館長も数年前から、温暖化による収穫量が減ることを想定して、温暖化対策の安価な設備(約1000万円)を
自分で開発したり、エネルギーコストを下げる設備を開発したりしながら、栽培の作業の手間暇を
惜しまないで収穫量を増やすよう頑張っています。
今年度は、2年前の安価な設備投資(1000万円)と手間暇を惜しまない栽培により、12月から5月までの、
連続的栽培が可能になりました。また温暖化対策による手間暇を惜しまない栽培の効果以外に
副産物としてイチゴの糖度を高くすることが出来ました。
来シーズンも、さらなる研究を深め、安全な無農薬栽培・練乳不要の甘いイチゴ・特徴が異なる
4種類のいちご狩り・贈答用の高品質のイチゴの販売量の拡大・真夏の従業員の温暖化対策に努めていきます。
上記対策をしても、効果が得られないこともあるので、計画的に栽培を進めていきたい。
計画作成に当たっては、過去の実績及び昨年度の実績をこの1~2か月に整理し、反省を込めて、
新しいアイディアを計画に盛り込むよう努めています。
反省の無いところに進歩は無いでしょう。
企業で言う、プラン・ヅウ・シー・チェックが需要です。
皆様方のご支援をお願い申し上げます。
来シーズンに向けて6月2日まで収穫するテスト栽培を行っています。
写真を参考に載せます。
写真1.株の生育は、申し分ない。ただし脇芽を取るのが出来なく、2~3株になっているので、実が小さい。
写真2.順路1の章姫。やはり1週間で赤くなり、実が柔らかい。さらなる改善が必要。甘み有り。
写真3. 紅ほっぺは、まだ粒も大きく、実が少し柔らかいが、 甘さはある。
写真4.かおり野は、粒も大きく、硬さはまあまあ。甘さもOK.
最近のコメント